構造設計者がいない!

6月20日に改正建築基準法が施行される。
確認申請の方法と構造計算そのものが大きく変わる。
しかも国土交通省は未だ運用指針を発表していない。

きちんとした具体的な運用指針細則が発表されるのは7月末。
さらにそれに行政組織が具体的に対応を始め、構造プログラムの改変が進むのは
8月末だろうと予測されている。

建築の法体系は基準法を筆頭に施行令、施行規則、省令、指針、さらには都道府県が定める条例にまで及ぶ。
ぜ~んぶ、建築関連の法令である。
おまけに建築士法まで変わる。

全てはあの構造偽装事件が発端となっている。
偽装の流れを絶ち、責任の所在をはっきりさせる為の改正でもある。
おかげで今まで元請の意匠設計事務所の影に隠れていた構造設計者が日の当たるところに出される。
構造家としての責任と所在が誰にも分かるように、である。

法的な責任が明確化されるのが狙いのはずが、今度は経済的な責任さえも
明確化されてしまう、のだ。
意匠設計に対して自立した存在であるかのように国土交通省は解釈している。

構造事務所の大半はそうでないのが実態だ。なのに、何かがあれば経済的にも責任を果たさねばならない。
そのお金はどこから??

さらに追い討ちをかけるのが新法では建築確認申請は追加、訂正を一切認めない。
誤字脱字のみしか許されず、1箇所でも間違い不適合があれば出しなおしとなる。
しかも5倍近くに膨れ上がった申請手数料は返還されず。
何度でも出しなおして下さい、毎回払って下さいという法である。

これだけ責任の所在を明確化された構造事務所は自己の責任で確認申請が通らなければ
全額請求されるのでは、と今から戦々恐々。
何しろ一番チェックが厳しく、計算してみなければ事前に打ち合わせなど出来ないのが
構造計算だからだ。
おまけに、対応した認定プログラムは年内に1つ出るか出ないか、という状態。

それで対処せよ、というのが今の状態。
さらには建物の規模に応じた有資格者、登録事務所でなければそもそも請け負うことすら適わない。

この恐るべき状況に私のチームプロジェクトも構造設計者を失う事になった。
来月に確認申請を出すように施主と契約している。

しかし、構造設計事務所で100%それに対応することは現状不可能。
それでも強行すれば多大な責任問題が発生する。

こうして今週は構造事務所探しに追われた。
約10社にお願いしてみたが、
「まともな構造事務所は7,8月は一切申請業務を行わないはずです。余りにもハイリスク、対応してくれるところは無いでしょう」との返事。
全部つれなく断られた。

非常事態、緊急事態。
構造設計者がいない!

しかし諦めない。東京のどこかに私に答えてくれる構造家がいるはず。
との思いで必死に探し続けた。
そしてひょんなことから大学の後輩から紹介を受けた。

人柄良し、場所よし、実績よし、の3拍子揃った構造事務所が見つかった。
お見合いして快く引き受けていただいた。すごい度量である。
仕事は切れなかった。

今度は審査機関を探すところから再度始まる。
東京中の検査機関と勝負。
我々の思いに応えてくれるところ。
運用指針が無い、と言う事はテスト期間でもある。
それに積極的にチャレンジしてくれる恐れを知らない審査機関が必要だ。

区役所や市役所は大安全策をとっている。
つまり他が明快な答えを出してくれるまで、
自分は答えを出さない、としか取れない方策だ。

と、ここまで書いたらふと思った。
予測しがたい荒波を超えていく現状、って5月30日の夢と同じだって・・・・・。

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