水戸の梅
今年の楽しみのひとつが消えた。仕方なかー、倍率が高すぎる、平日だから皆腰が引けるかと思ってたら、省吾ファンはそんなに柔ではない、当たりもしないチケットのために3か月前から有休を取ってスタンばる。
その熱意の川が見えるようだ。
かくして私は流れ去った。1回の落選でも1年以上待つのだ。次回は一体何時なのだろう?
浮いた予算で二人で旅行に行こう。ココロイヤス旅へ。
先先週は疲れた体に鞭打って水戸まで行った。丁度梅が見頃、偕楽園は人だかり梅だかり。
でも奥様の狙いはそこではない、県立美術館の東山魁偉だ。
唐招提寺の障壁画を見ることだった。
東山かいい?白いお馬のメルヘンチックな日本画家だよなー、気乗りうすだった私は薄暗い館内に入って目がなれてきたところで驚いた。
目の前に波が押し寄せ風が渦巻き潮の匂いまで満ちてきそうな空気感があふれている。
なんじゃこりゃ
ターナーだ。山入端から水蒸気が立ち上ぼり流れ包みまた押し寄せる、これほんとの景色のエッセンスを凝縮した流れる絵だ。
茫然と絵の前にたち体が揺れ吸い込まれそうになるのを支える。
すごい、これを見に来たんだ、恐るべし魁偉。
私は無知だった。
この人の描いた売れるための絵だけ今までは見てた。
東郷青児の日本画版と思ってました。
水戸は近い、特急で1時間もかからずに着いてしまう、行きは良いが帰りが大変、偕楽園からの帰りのバスがとんでも混雑、本数も少なく電車で来た人の事はまるで頭にない、といった塩梅。
タクシーは大渋滞で呼んでも来てくれない。
2どめだけど二度と来るものかと思う。
水戸に少しだけこだわりがある、親父が若い頃ここの航空通信隊にいたようでこの変わり果てた町は親父の青春の舞台だったようだ。
定年後に一人でときどき来ていたみたい。
そんなにいいと思う場所なら母を連れてくるべきだったんじゃ、と思ってしまう。
想い出は分かち合うと色濃さを増す場合もあるから。
後ろめたい気分なんて時を経た春の風が吹き飛ばしてくれるから。
ここに来るまでのいきさつは親父が亡くなるちょっと前にうわ言のように聞いた。
お祖父さんとの長い長い確執の果ての場所らしい。海軍の大佐だったお祖父さんと陸軍の大尉だった親父とは死ぬまでいがみ合い理解し会おうとはしなかった。
なんせ死ぬ直前までこだわっていたからなー、
人の歴史は長く曲がりくねっている、その道を辿りたいとは思わないけど。