まだ始まらない

先々週から週に4日行くことにした。上野公園の事務所に。
1月頃には事務所を出るときに見上げる部屋の明かりは僅かだったけど
3月になってだんだん増えてきた。もう通常とそんなに変わらない。
通勤電車も歩いている人の数も、元に戻っている。

桜も咲き始め街には華やかな彩りが添えられ、坂道を埋める木の葉も変わらないのに
駅前の新しい喫茶店も扉を閉ざし、通りを眺めくつろぐ人もいない。
ただ皆、かすかな罪の意識を引きずって勤めるべき場所へと急いでいる。

もう狭い場所で我慢して仕事をするのはうんざり。疲れ切ってしまう。
久しぶりの広い空間は、いつもの自由な風を感じさせてくれる。
うれしくて仕事が進まない。こんなことあんなこと、自由だと何でもできる。
ここは創造の場所。

心も体も跳ね返る意識に委縮する必要はない。
そうだね、みんな疲れているのだ。春なのに、咲き誇る桜も見てはだめと言われる。
立ち止まらず通過するだけ。ゴッホ展じゃあるまいし。
少しずつ少しずつ戻っていく、日常が。
多分この代償は後で払うんだろうけど。

浜田省吾「この新しい朝に」

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