2021お盆 親父帰る
今年もお盆の季節がやってきた。
7月にすべきかどうか分らぬまま8月にも我が家ではやってる。そもそも我が家では両親が全くその手の行事をしてこなかった。
家には仏壇もなく毎朝拝むこともなくそれが今風の事と認識していた。
ところが奥様の両親が相次ぎ亡くなり、拝む必要が出てきた。親父の位牌も母が持っていたのを長男の私がもらい受けた。認知症の母は親父の死を認めようとしない。
そもそも認知症になったのも親父が亡くたった直後からだ。それが原因のひとつだろうと思っている。
私は義理の両親がとても好きだった。親として人として生き方を持った立派な人たちだったから。
黒枠の写真だけでは物足りなくなってきた。
今じゃ狭いマンションの一部屋でまとめて祀ってある。
今年は夫婦で別々に馬と牛を置いた。これに乗って帰るように祈った、少しだけリアルに。
そしたら翌日の夢に出てきた。親父が。
東京の事務所の玄関を鳴らす者がいる。仕事中の私が扉を開けるとそこに立っていたのは
白いワイシャツに黒いズボンをはいたセールスマンみたいな律儀な格好の親父だった。
例によって足元はぼやけている。その左隣に同じ格好の少し背の低い猫背気味の男の影が見える。
誰だろうと思ったけれど、兎に角中に入ろうとする親父を止めた。
駄目だ、入ってくるな。声が出ない。上半身が金縛りのあったみたい。力を集めてかろうじて声を絞り出す。意外と大声になった。出て行け!そう叫んでいた。
自分の大声で目が覚める。体が跳ねるような衝撃。隣の居間で奥様の気配がする。まだ起きてる。
そう思ったら眠ってしまった。
翌朝その話をした、お盆で親父が帰ってきた、ということになった。
10年前に亡くなった時も夢の中で親父は事務所にやって来た。やはり足が見えなかった。
生前は一度も来たことが無かった。きっと来たかったのだろうけれど言い出せなかったのだろう。
まさか帰ってくるなんてこちらが驚いてしまう。
何だか大声で追い払ってしまったことがひどく恥ずかしかった。
自分で呼んでおいて・・何てことだ。
上野公園清水観音堂2021春撮影